Italian Trend
2024年10月

イタリアと日本に共通する 発酵料理のトレンドとは
近年「発酵」をキーワードにしたレストランの躍進が目覚ましい。記憶に新しいのは世界ベストレストラン50で世界一に輝いたデンマークの「ノーマ」に代表される北欧ガストロノミーだ。日本文化にも造詣が深い「ノーマ」のシェフ、レネ・レゼピが2018年に発表した著書「Guide to Fermentation(発酵ガイド)」は世界中の料理人に愛用されるベストセラーとなり、その後の発酵ブームを牽引することになった。ことイタリア料理に関していえば発酵との関係は非常に古く、ワイン、パン、ヴィネガー、チーズ、ガルム(魚醤)といった食品はローマ時代以前から愛用されており、その歴史は2000年以上に及ぶ。

それは日本も同じことで中国経由で伝わった味噌、醤油、酢、酒、納豆など発酵食品のバリエーションはイタリアを凌ぐほど。ベースとなる「麹」は国菌とも呼ばれているが、国菌という概念が存在するのは世界広しといえども日本ぐらいだ。日本の食材とイタリア料理の親和性の高さは、彩り豊かな四季が生み出すさまざまな季節の食材であることは以前にも書いたが、こと発酵に関していうならば日本はイタリアをしのぐものがある。そうしたさまざまな発酵食品や技術が日本のイタリア料理に投影されるのはごく自然なことなのだが、とはいえ納豆スパゲッティやバター醤油スパゲッティを、家庭はさておきレストランで提供するわけにはいかず、そこはイタリア料理人としての矜持が試される分水嶺となる。

2018年ミラノで行われた「Barilla Pasta Word Championship」決勝には石川県「Villa della Pace」の平田明珠シェフが日本代表として出場したが、その際能登の発酵食品いしるや乾燥甘エビのパウダーを使った「甘海老のカルボナーラ」を披露し、審査員やメンターシェフたちが日本の発酵食品に高い興味を示していた。当時から逆にイタリア人シェフたちも日本の発酵技術を料理に取り入れようと研究に取り組んでいたのだ。なお、ITALIAN WEEK 100(2024年11月1日〜30日)では「発酵の可能性」をテーマに、日本全国100のTOPイタリア料理店のシェフがオリジナリティあふれる発酵メニューを披露する。
Photo&Text MASAKATSU IKEDA (ITALIAN WEEK 100 Director)