Italian Trend
2024年12月
アントニア・クリュグマンが5カッペッリに輝く
イタリア料理界において、最も影響力がある3大レストランガイドといえば「ミシュラン」「ガンベロロッソ」そして来年で創刊45周年を迎える「エスプレッソ」があげられるだろう。先日「エスプレッソ」2025年度版がミラノのアルチンボルド劇場で発表になったが、最大の話題は女性シェフ、アントニア・クルーグマンの5カッペッリ(5つ帽子、ゴエミヨのトックに相当)昇格のニュースだった。「エスプレッソ」の採点システムは20点満点で19点以上のレストランに5カッペッリが与えられるのだが、2025年度版でもその数わずかに8軒。「ミシュラン」2025年度版で3つ星店は14軒なので、「エスプレッソ」の5カッペッリは3つ星よりも狭き門なのである。
アントニア・クルーグマンはユダヤ人の父とイタリア人の母のもとで生まれ育ち、ミラノ大学法学部に入学したものの料理の道を志し3年で中退。フリウリやヴェネトを中心にさまざまなレストランで働き始めたが26歳の時に交通事故で1年間休職。復職後の2014年に姉のヴィットリアと2人で念願のレストラン「アルジネ・ア・ヴェンコ」をオープンし、翌年にはすぐにミシュラン・イタリアで1つ星に輝いたのだ。
「アルジネ・ア・ヴェンコ」は北イタリアのフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州、スロヴェニア国境に近い林の中にある。クルーグマンは自然環境に恵まれた場所で自ら野菜や果物を育て、自ら採取するフォレジングを実践するシェフだ。彼女の料理はナチュラルで体に優しく、そしてフリウリらしい滋味がひしひしと伝わってくる素晴らしい料理だったことは今も忘れ難い。
「オステリア・フランチェスカーナ」のマッシモ・ボットゥーラや「レ・カランドレ」マッシミリアーノ・アライモら3つ星常連の巨匠たちに並び、クルーグマンは女性シェフとして唯一5カッペッリを獲得したことは特筆すべき功績だろう。従来イタリアは女性シェフの仕事や才能が、高く評価される素地がある国である。同じくミシュラン3つ星の「ダル・ペスカトーレ」ナディア・サンティーニや、フランス人ではあるが「エノテカ・ピンキオーリ」アニー・フェオルデら多くの女性シェフがイタリア料理の歴史を作ってきたのだ。
Photo&Text MASAKATSU IKEDA (ITALIAN WEEK 100 Director)